三 ウチアゲロケット
【ヨハン(オフ)】「と、とにかくダメなものはダメですから! わ、私が神殿に叱られますよ〜!」
【シリウス(オフ)】「大丈夫です。プルート殿には私からちゃーんと言っておきますから。後で」
【ヨハン(オフ)】「後でっていうのがまずいと思うんですっ!」
○ドアを開ける。
【アクア】「……あら、シリウスが魔法院に来てる。……めずらしいの、二乗」
【シリウス】「ハア〜イ、おじゃましていますよ。歓迎したまえ、魔法院の者よ!」
【ボビー】「オハヨー!」
【ヨハン】「あああ、ふたりとも! いいところに来ました、助けて下さい!」
○ボビー、ヨハンにアタック。
【ヨハン】「あたっ!」
【シリウス】「人聞きの悪い。私は何もしていないじゃないですか」
【ただお願いに参っただけですのに。ねえ、ボビー?」
【ボビー】「ソウソウ〜!」
【ユニシス】「シリウス様のお願い〜?」
【アクア】「まあ、シリウス……テニス大会や決闘ごっこも記憶に新しいっていうのに……。また何かやるつもりなの? ……こりないわね」
【シリウス】「嫌だなあ、前向きと言って欲しいですね!。それに、前の二件については私のせいではありませんよ。そもそもですね! 素直にみなさんが私と遊んでくれれば、何も事件は起きなかった。ええ、そうですとも! 私がそう決めました! 今!」
【アクア】「……まあ、シリウスらしい……誰もついてこれない理論……」
【シリウス】「そうでしょう! 【人の企画にのってあれこれなど、私の勝ちパターンに反する行為でした。私が今度はおまつりを企画しますよ! もちろん強制的にみなさんも参加して頂きます。
【ユニシス】「うわああ、やっぱり厄介ごとだ〜……」
【アクア】「……へえ、お祭り。……なにするの? 屋台とか?」
【シリウス】「ふふん、ズバリ!」
【ボビー】「ジャジャーン!」
○どらえもん風にボビーを振り上げる。
【シリウス】「花火大会です!」
【アクア・ユニシス】「はなびたいかい〜?」
【ヨハン】「……そうらしいです。で、その花火を私たち魔法院に作れと言うのですよ」
【ユニシス】「えっ、俺たちが作るんですか!?」
【シリウス】「もちろん報酬は私が出しますし、弾みますよ」
【どうです、いい話でしょう? 断る理由なんて、ないでしょう?」
【ヨハン】「いえいえ!花火作りは危ないですから。他の魔導師も普段の仕事が忙しいですし、ねえ。ふたりとも。できないですよねえ? ね?」
【ユニシス】「へえ……シリウス様にしてては面白いそうな企画だね! 俺、花火大好き!」
【ヨハン】「へ? ユニは賛成なんですか? シリウス様の企画なのに」
【ユニシス】「だって火薬扱えるんですよね? 俺、作ってみたい! なあ、アクアだって作ってみたいだろ?」
【アクア】「……私……? そうねえ……ド派手なのなら……ふふ」
【ヨハン】「アクアさん、ユニ……っ」
【シリウス】「ふっふっふっ、ほーら、みなさい! 四対一ですよ。これは観念するしかないですよね、ヨハン殿!」
【ヨハン】「(頭を抱えながら)……ふたりとも……私の味方じゃないんですか〜?」
【シリウス】「大丈夫ですよ、今回は私はなにも企んでおりませんから。単に、久しぶりに美しい光の華をみなさんと見たいだけなんです。せっかくの夏の終わり、私も楽しく過ごしたいですからね」
【ヨハン】「……わかりました。……どうやら、これ以上の反論も無意味のようですし。花火作成、お引き受け致しましょうか」
【アクア】「わ」
【ユニシス】「やったー!」
【ヨハン】「ですが、本当にプルート様には事前に許可を取って下さいね? 花火の材料を作るためには、アロランディアでは精製禁止の技術を使わねばなりません。許可が出なければ、そこで終わりです。お約束、して頂けますか?」
【ボビー】「リョウカイ〜。リョウカイ〜」
【ヨハン】「ううっ、ふ、不安です……」
【シリウス】「じゃ、そういうことで! 素敵な花火大会になることを期待していますよ! では、私は招待状を書かねば! ふふん、楽しみですねえ〜。それでは〜☆」
【ボビー】「バイバーイ!」
○シリウス高笑いをしながら出て行く。
【アクア】「……ばいばーい」
【ヨハン】「……やれやれ(ソファに倒れ込む)シリウス様とお話しするのは体力がいるなあ……」
【ユニシス】「先生、大丈夫?」
【ヨハン】「はは、大丈夫ですよ。もう慣れました。……と、休んでいる場合ではありませんでした。そろそろふたりの授業の時間でしたね」
【ユニシス】「えっ、あ……そうですね」
【ヨハン】「すみません、最近神殿に呼ばれることが多くて、ふたりの面倒が見られなくて」
【アクア】「……だいじょうぶ。先生もたいへんね」
【ヨハン】「そう言って頂けると気が楽になります、ありがとう。……さて、じゃあ先週の課題、見ましょうか。さ、ふたりとも出してください」
【アクア】「はい。(アクア、机から紙束を出して渡す)」
【ユニシス】「……これ、です……(ユニシスも渡す)」
【ヨハン】「はい、頂きました。ん……? ユニのはずいぶん少ないですね」
【ユニシス】「……」
【ヨハン】「ちょっとまって下さいね。今、目を通しますから……」
【ユニシス】「……そ、それじゃ、俺。ご飯の準備、してきますから。アクア、オムライスでよかったんだよな」
【アクア】「うん」
【ユニシス】「じゃ、できたら呼ぶから」
【ヨハン】「……待ちなさい、ユニ」
【ユニシス】「……っ」