「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

九 ネガイノマホウ

○再び洞窟。アクア側。三人、洞窟の奥で騒ぎ疲れて座っている。

【ヨハン】「やれやれ、やっぱり食べられるようなものは何もないですねえ」
【シリウス】「あいにく私も何も持ってなかったよ」
【ボビー】「ハラペコー。(お腹の音)」
【アクア】「はらぺこー。(お腹の音)」
【シリウス】「ヨハン殿。火の魔法がだめなら、他のはどうなんですか。食べ物を手に入れられるような」
【ヨハン】「シリウス様、魔法はなんでも出てくる壺じゃないんですから」
【シリウス】「知ってますよ。言ってみただけですよ。寒っ……」
【ヨハン】「……いよいよ冷えてきましたね」
【アクア】「洞窟のなかだし。仕方ないわ。……せんせい、だっこして」
【ヨハン】「そうですねえ。火が使えない以上、それが一番暖をとれます」
【シリウス】「あっ、アクア殿〜。どうして私じゃなくてヨハン殿なんですか」
【アクア】「うるさい、へんしつしゃ」
【シリウス】「あっ、アクア殿〜! ひ、ひどいですよ〜。敵に荷担した上、その仕打ち!」
【ヨハン】「は、私が敵ですか?」
【シリウス】「ええ、そうです。あなたがユニシスに酷いことをするから、私とアクア殿は連合を組んだのですよ」
【ボビー】「テキテキー! セイバイ!」

○ボビーで叩かれる。

【ヨハン】「あたっ。……はあ、それでふたりで私の跡をつけたんですか。やれやれ」
【アクア】「でも、お仕事なのよね」
【ヨハン】「……まあ、そうとも言えます。……困ったな。彼は魔導師なんですから。あれくらいは当然です」
【アクア】「……先生」
【ヨハン】「魔法はまだ世界にとって新しい力です。研究が進んでいない分野がほとんどですし、扱いが危険な知識もたくさんある。魔導師でいようするなら、あらゆる誘惑と戦わなくてはいけない。彼はその道を選んだのです。だから、私はどんなに言われても彼のしたことを許すつもりはありません。……彼が気づかない限りは、このままです」
【アクア】「……先生」
【シリウス】「魔法、魔法、魔法ね。……魔法王国であるダリス人の私が言うのもなんだけど。……そんな必死になって守るほど、魔法には価値があるのかな」
【ヨハン】「シリウス様」
【シリウス】「今、私たちすらも救えないものが、なぜ世界を救えると言えるのか。……ばからしい」

○洞窟の奥でまた崩落。遠く聞こえるそれを静かに聞く。
○水音、突然大きく聞こえてくる。

【アクア】「……また、どこか崩れた……」
【シリウス】「そのようですね。……水音がする」
【ヨハン】「……場所を移動しましょう。少しでも影響の少ないところを捜して」
【シリウス】「……無駄じゃないかな」
【アクア】「シリウス?」
【シリウス】「……魔法なんて、世界は認めない。そう思ったことは? ヨハン殿」
【ヨハン】「それは、私のしていることが間違っていると?」
【シリウス】「さあ、それは後の歴史家が決めることでしょう。もしも私たちがここで生き残れれば、ですが」

○水の音が大きく迫ってくる。

【アクア】「水の音……」
【ヨハン】「まさか」
【シリウス】「ヨハン殿、お忘れですか。ここは海に囲まれた神の島、アロランディアなのですよ。……あなたのしていることに神が怒りを覚えたのなら、今は絶好の機会でしょう」
【アクア】「……先生、水が近づいてくる。……ここ、危ない」
【ヨハン】「……海からですか! まずい!」
【シリウス】「さあ、ヨハン殿。……反論は? ……認めますか。あなたが間違っていたと。……そうすれば、神様も助けてくれるかもしれませんよ」
【ヨハン】「私は……!」
【アクア】「……先生!」

○水が流れこんでくる。

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