「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

六 ヤマナイアメ

○魔法院。アクアの部屋。花火のサンプル版を作っている

【アクア】「……よいしょっ。よいしょ……。(机で粘土をこねている)ふーー、とりあえず加工は完了……。やれやれ……」

○お腹がなる音。

【アクア】「あああ……こんな日には黄色いたまごにケチャップよね……。何日食べてないかな……むう〜……」
【シリウス】「アクア殿、つーかまーえたっ! 私は、だーれでしょう〜! (シリウス、アクアの目隠しをする)」
【アクア】「……ひゃっっ! (シリウス、アクアにひじ鉄をくらう)」
【シリウス】「ぐあっ」
【アクア】「……シリウス。私の後ろを取ろうだなんて……百年早いわよ……」
【シリウス】「たたた、ちょっとしたおちゃめなジョークじゃないかあ!」
【アクア】「なんのよう? ……いそがしいの、またこんどね」
【シリウス】「つれないなあ、アクア殿。花火大会のスポンサーに〜。みんなががんばってくれてると思って、差し入れを持ってきたんだよ〜」

○シリウス、指を鳴らす。

【シリウス】「カモーン!」
【部下】「はっ! ただいま!」

○部下三人ほどで箱が積まれる。

【アクア】「……くんくんこの匂い……ちょこれーと?」
【シリウス】「ご名答。私が連れてきたパティシエに作らせた最高級品だよ」
【スーパーデリシャスと言っていいでしょう!」
【アクア】「食べてみていい……?」
【シリウス】「もちろんさ」
【アクア】「……(チョコを食べる)……ぺっ(はき出す)」
【シリウス】「ああっ、なんということを!」
【アクア】「う〜ん、さんじゅってん」
【シリウス】「そんな馬鹿なーーー!」
【アクア】「ユニシスが作ったのの方がおいしい。女心がわかってないわね……今のトレンドはね……オムライス。これしかないわ」

○ドーン、みたいな漫画な効果音があると。

【シリウス】「ええ〜、それ、お菓子じゃないですよ〜!」
【アクア】「オムライスのよさがわからないなんて……だめね。今時の男って」
【シリウス】「……わかりましたよ。アクア殿に真っ向勝負のものを持って来た、私の負けですよ……。ちぇっ」
【ボビー】「コーサン、コーサン!」
【アクア】「わかればいいのよ、わかれば。だけど、先生はきっと嬉しいと思うから、もらっておくわ」
【シリウス】「ま、ゴミになるよりはいいけど。それより、花火の方はどうだい? うまくできそう?」
【アクア】「……びみょ〜」
【ボビー】「ヒア〜! そんな〜!」
【アクア】「……ユニシスがいれば、だいぶ違うんだけど」
【シリウス】「ああ、ソロイ殿に預けられている子か。ヨハン殿も罰が過ぎる。あの堅物相手とは、可哀想に」
【アクア】「ユニシス、元気?」
【シリウス】「さあ、私の部屋からはかなり離れているから、様子まではわからないな。気になる?」
【アクア】「そう」
【シリウス】「おや、君までヨハン殿とケンカかい?」
【アクア】「そんなことないけど。……先生、ずっと神殿にいるから。ねえ、シリウス」
【シリウス】「なんだい?」
【アクア】「シリウスは傍若無人だけど、誰かに嫌われたらどうしようって思ったりはしないの?」
【シリウス】「おや、アクア殿にそれを聞かれるとは。君だって私に負けずに傍若無人だと思うけど」
【アクア】「……私は胸がちくんとするもの。それとも……私だけ?」
【シリウス】「おやおや……それはヨハン殿のせい?」
【アクア】「……わかんない。私だけなら、いい。変なこと聞いた。忘れて」
【シリウス】「いやいや、しますよ。私だって。……胸の痛みがないわけがない」
【アクア】「そうなの?」
【シリウス】「人なら誰もそうでしょう。あなた方の師匠は別かもしれませんが」
【アクア】「……先生が?そんなこと……ないと思う、シリウスにあるなら、先生にもあるわ」
【シリウス】「さて、どうでしょうね。私も完璧だけど、彼の完璧はどうも目に余る。……人の心を持たないからかもしれませんよ?」

○廊下で気配。

【ヨハン】「アクアさん、います?」
【アクア】「……先生?」

○ヨハン、アクアの部屋を開ける。

【シリウス】「おや、噂をすれば」
【ヨハン】「わっ、シリウス様! い、いらしてたんですか」
【シリウス】「おや、いらしてたらまずいのかい? ふふ」
【ヨハン】「い、いえ。そういうわけではないんですが。……アクアさん、私、ちょっと出かけてきますので。留守番お願い致しますね」
【アクア】「え、もうこんな時間なのに……?」
【ヨハン】「扉の鍵は閉めて頂いて結構ですので。では、行ってきます」

○ヨハン扉を閉めていく。

【シリウス】「……やれやれ、タイミング良く来たと思ったらそれか。仮説は本当かな?」
【アクア】「でも……めずらし……先生が夜中に出歩くなんて」
【シリウス】「へ、そうなのかい?」
【アクア】「夜は先生、部屋で研究してるもの。……外に泊まるなんて、今までなかったよ」
【シリウス】「ほほう……ふーん、そう? よーし、じゃあ後をつけよう♪」
【ボビー】「タノシソーー!」
【アクア】「えっ。先生の? ……それってストーカー」
【シリウス】「こらこらこらこら! 人聞きの悪い! 弱みを握るだけですよ。珍しい夜歩き、何もないはずはないでしょう?」
【アクア】「レベルアップ。ストーカー……脅迫……さすが」
【シリウス】「こらこらこら! 君のためにやろうとしてるのに」
【アクア】「私のために?」
【シリウス】「君はヨハン殿とユニシスの諍いに胸を痛めている。だったら、見つけてあげればいい。ヨハン殿にも悪いところがあるってね」
【アクア】「……シリウス」
【シリウス】「弟子の面倒をみない師匠に、多少のお灸をすえてやれば、ユニシスだって戻ってくるさ。彼に謝らせることだって可能だ」
【アクア】「……そうかな」
【シリウス】「そうさ。さあ、つべこべ言わない! 行きますよっ。ユハン殿をギャフンと言わせる同盟〜!」
【ボビー】「れっつゴー♪」
【アクア】「わっ、ちょ、ちょっ待って。……むう……本当にいいのかなあ、それ……」

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