「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

十一 オモイデ

○再び、ユニシス視点へ。リュートとソロイたちの場面です。

【ソロイ】「……リュート!」

○ユニシスをつかみ上げるリュート。

【リュート】「……いい加減にしろ」
【ユニシス】「いたっ」
【リュート】「いつまで、君は逃げてる? できない、わからない、なんとかしてくれって、わめくだけなら誰だってできる!」
【ソロイ】「よせ、お前らしくもない」
【リュート】「彼しかいないんです! ソロイ様だって、わかってるはずでしょう。らしくないのは、ソロイ様の方です!」
【ソロイ】「……」
【ユニシス】「離せっ!」
【リュート】「……ああ、離してやるよ! (ユニシスをつきとばす)……君には失望する。魔法院にもだ」
【リュート】「僕は騎士だけど、魔法は嫌いじゃなかった。いつか世界に役立つ力だというのも、わかるから。だけど、今、役にたたないのなら、そんなのいらない。魔法なんて、必要ない!」
【ソロイ】「……そのあたりにしておけ。相手は子どもだ」
【リュート】「……すみません。ソロイ様。……失礼します」
【ユニシス】「……待てよ」
【リュート】「……なに?」
【ユニシス】「訂正しろ。今の。……魔法は、いらなくなんかない。いつか世界をもっと良くする力なんだ!」
【ソロイ】「ユニシス」
【リュート】「先生が言ったからでしょ」
【ユニシス】「……っ」
【リュート】「誰かが言ったから、本で読んだからでしょ。それは君の言葉じゃない。……ただ先生のところにいられれば、君は生きていられる。だから、魔法院に……」
【ユニシス】「ちがう! 俺は……そんなんじゃ!」
【ソロイ】「ユニシス」
【ユニシス】「……」
【ソロイ】「お前は私の鍵を使わなかったそうだな」
【ユニシス】「……ソロイ様」
【ソロイ】「私もお前に失望している。……何故かはわかるな?」
【ユニシス】「……はい」
【ソロイ】「……だが、ヨハン殿は私にお前を預けた。それは、裏切られてもヨハン殿だけはお前を信じていたからだ」
【ユニシス】「……」
【ソロイ】「逃げてもかまわん。そもそも私の期待など、とうに終わっている。だが、挑んでみるか? もう一度。……ヨハン殿に免じて……二度はない。選べ。自分で選べ。ここに残るか、消えるかを」
【ユニシス】「……ソロイ様」
【ソロイ】「……」

○遠くで土砂崩れの音。

【アーク】「ぐあっ! 足下、あぶねー……!」
【リュート】「……え? な、なんでアークここにいるの!?」
【アーク】「げ、リュート! ソロイ様までいる。あ、あたりまえか」
【ソロイ】「……縛り付けておいたのではなかったのか? それに……マリン殿に葵殿まで」
【葵】「言うな。減俸二ヶ月でよいそうだ」
【リュート】「アーク、こんなところに女の子連れてきて……どういうつもり?」
【アーク】「俺だって言ったよ、そんなことは!」
【マリン】「もちろん、お手伝いに来たんです!」
【葵】「ただ待っているなど、私の性にあわぬ」
【リュート】「ここは危険なんだ。アクアさんはもしかしたら助からないかもしれない。……そうしたら、誰が星の娘になるんだ。ソロイ様、命令を。今すぐ、彼女たちを……!」
【葵】「リュート、おぬしがどれだけ帰れと言っても帰らぬからな。
【マリン】「それに、私たちは星の娘候補です。……誰かを助けられる運命を持っていると信じたら……思い上がりですか?」
【リュート】「……マリンさん」
【プルート】「……リュート。そこまでになさい。私もここにいたいのです。追い返されると困る」
【ソロイ】「プルート様!」
【プルート】「(フードの水滴をぬぐいながら)……ソロイ。お願いです。私に……最後まで彼の味方でいさせて下さい。……あなたがヨハンに共感するように、私は彼に共感する。……ユニシス」
【ユニシス】「星読み様」
【プルート】「あなたは、魔導師ですよね?」
【ユニシス】「……はい」
【プルート】「だったら、大丈夫ですよ。できます」
【ユニシス】「……プルート様」
【プルート】「私は、信じてます。きっと、ヨハン殿もね」
【ソロイ】「……とにかく、安全なところへ。問答はその後です」
【ユニシス】「待って、ソロイ様。……悪いけど、あんたにもプルート様にも、マリンと葵にも手伝ってもらう。アークとリュートにもな」
【マリン】「ユニシスさん……?」
【ユニシス】「……手伝ってもらうぜ。ちょっと早いけど……花火大会やってやるよ! ド派手にな!」

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