「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

十二 マイ・リトルスター

○アクア視点へ。
○爆発音。水、洞窟内へ一気にあふれ出る。

【ヨハン】「うわっ」
【アクア】「ひゃっ」
【シリウス】「やれやれ、間一髪でしたねえ」
【ヨハン】「うまく岩でせき止められましたからね。多少は水に濡れましたが、流されないだけありがたい」
【アクア】「……だけど、そんなの持ってるなんて反則。最初から使えばよかったのに」
【シリウス】「これでも切り札だったんですよ。ボビーの中身」
【ヨハン】「……魔法銃だったなんて」
【アクア】「ボビーって、危険な男だったのね……」
【シリウス】「そうですよ〜、なんてったって私の親友なんですから。……あと一発残っていたら、もうひとり撃ちたかったねえ」
【ボビー】「ザンネーン」
【ヨハン】「シリウス様」
【シリウス】「……ま、あなたの言うこともわかる。……ユニシスは子どもだ。アクア殿と違う意味でね」
【アクア】「私とユニシスが違う?」
【シリウス】「そう。同じ子どもの姿でも、対等でないということです。彼はただ逃げているだけ。自分の弱さや、責任、夢からもね。……そう、だから。あなたは間違っていない。ヨハン殿」
【アクア】「シリウス……」
【シリウス】「だから助けてあげたんですよ。……ま、完全なるピンチからは抜け出せてはいませんが。せき止めた岩も、水圧でそうは持たない。夜明けまでに見つけてもらえなかったら、そこで終わりです」

○シリウスが岩盤を破壊したので、小さな穴が外に通じています。

【シリウス】「……穴は空いたけど、あんな小さくてはね。空の破片しか見えない」
【ヨハン】「はい?」
【アクア】「あの穴から星が見えるよ。……なんて名前?」
【シリウス】「さてね、ここの方角がわかれば、答えようもあるんだけど」
【アクア】「ここからなら、手が届きそうなのに。届かないのね。シリウスならもってる? 王子様だし」
【シリウス】「え? ……う、それは……うーん、ええと……」
【アクア】「くれたら結婚してあげてもいいよ」
【シリウス】「……う、ど、どうしようかなあ」
【ヨハン】「こらこら、アクアさん。無理なことを言わないように。さすがに空の星は無理ですよ。人のもてる星など、そうはありません。たとえば、これとか」
【アクア】「え、先生は持っているの? 星」
【ヨハン】「ええ、私はそれをここに取りに来たんです」

○ヨハン、懐から何かを取り出す。

【シリウス】「……光る石……? なんだい、これは」
【ヨハン】「中に魔力が閉じこめられている鉱石なんです。アロランディアでしか取れない、貴重な石ですよ。プルート様が特別に採掘を許可して下さいましたので」
【シリウス】「プルート殿が? どうしてそんなことを」
【アクア】「……中に閉じこめられてる力、火の魔法ね」
【ヨハン】「そうです。これを使えば素敵な花火ができますよ。シリウス様。……魔導師でない人にも簡単に扱えますし」
【シリウス】「……それは、マリン殿や葵殿……一般市民も、ということかい?」
【ヨハン】「ええ、派手なものは無理ですけどね。……私は、反対したんです。プルート様のお気持ちは嬉しいけれど、私はユニシスには、自分の力で……たどり着いて欲しかったから」
【アクア】「先生」
【ヨハン】「……使ってみますか。威力も薄いし、水が近くにありますから、そう遠くまでは、届かないでしょうけどね。……『解放せよ、神の言葉をはなつがごとく……』……」

○石が砕けた後、大きな花火の音。

【シリウス】「わっ!?」
【アクア】「……あぶない!」
【ヨハン】「えっ……ま、まだ詠唱が終わってないのに? ……うわ……わ!」
【シリウス】「……しまった、もう耐えられなかったのか!?」

○大きく瓦礫が崩れる音。

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