「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

十三 ホシヘカエル

【マリン】「あわわ、こ、こんなんでいいんでしょうか?」
【葵】「ユニシス! わ、私に魔法陣などいじらせないでくれ!」
【ユニシス】「つべこべ言うな! 途中まではアクアが作ってるんだから、起動させない限り爆発なんて……気を付けてればしないよ」
【葵】「そ、それでは何の慰めにもならぬ! ううっ、力仕事を手伝うつもりが、ど、どうして魔法など……」
【アーク】「だーー、そうだよ! なんで俺たちが使いっぱなんだよ! (魔法の道具を下ろす)魔法院とここの往復なんて、病み上がりにさせんなよな」
【リュート】「これで、言われたものは全部のはずだけど。こんな大がかりな魔法陣……君に扱えるの」

○不気味に光ってる雰囲気のSE。

【ユニシス】「……『縁』があればね」
【リュート】「えにし? ……なにそれ?」
【葵】「ほう、おぬしがそんな言葉を知っているとは」
【ユニシス】「……お前の国ではどうだか知らないけど。魔法用語のひとつ。縁ってのは、運命のつながりのこと。……それがあればきっと、見つけられると思う」
【アーク】「なかったら、このでっかい花火、どうなんだ?」
【ユニシス】「爆発はするよ。だけど、先生たちのいるところには飛んでいかないから……助からないよね」
【プルート】「その縁というものがあれば、この魔法陣と彼らがつながるわけですね」
【ユニシス】「そう。これならいる場所がわからなくても、出口を作ってくれるはずだ。……だけど、俺と先生のつながりなんて……あんまりないかもしれないけどね。俺と先生は赤の他人で、血もつながってないし……。俺がつながっていたくても、先生はもう」
【リュート】「……ユニシス」
【ユニシス】「始めるよ。下がって。『つながれ、魔力の道。ここには別れしものがある……』」
【マリン】「あ、そんなの簡単じゃないですか」
【ユニシス】「『……つながれ、星の道を通って……』」
【マリン】「アクアさんがいるじゃないですか」
【ユニシス】「あ……!」

○魔法陣、発動する。風がごう、と逆巻く感じ。
○花火の音がいろいろ。

【ユニシス】「な、なななな、なんでそこでアクアが出てくるんだよっ!」
【マリン】「え、だ、だってその……さ、三人魔法院だし、な、仲良くて家族みたいだしっ……!」
【ユニシス】「か、かぞくっていうか! その……」
【マリン】「きゃっ!」

○花火はじける。

【アーク】「うわっ! ばかっ! 詠唱途中で止めやがった!」
【リュート】「……あつつつ! ひ、避難!」
【ソロイ】「プルート様、私の後ろへ!」
【プルート】「か、火薬、多いですね……」
【葵】「さ、さすがアクア殿が作っただけはあるな……!」
【マリン】「きゃーー! ごめんなさい、私のせいーー!?」

○ひときわ大きな爆発。

【ユニシス】「……や、やば。しまった……失敗?」
【ユニシス】「(岩のカスを吐きながら)げほっ……煙が! ……手応えはあった、けど」

○風の音。

【ユニシス】「……だめだったのかよ」
【マリン】「……ユニシスさん。ご、ごめんなさい。変なこと言って。集中切らしちゃって……」
【ユニシス】「……違う、俺のせいだ」
【葵】「……ユニシス」
【ユニシス】「ばかみてー。やっぱだめじゃん。取り戻したいと思ったのに、できるかもって。俺とアクアと先生は……やっぱりつながってなかったのかよ! 畜生!」

○ユニシス、壁をぶったたく。がこん、と落ちる。

【シリウス(オフ)】「あたっ!」
【葵】「……え?」
【マリン】「……今……誰かの声が……」
【プルート】「ソロイ! そこの岩盤を崩しなさい!」
【ソロイ】「……はい!」

○がこん、と岩がはがれる。下の方でシリウスたちが文句。

【シリウス(オフ)】「し、死ぬかと思った……酷いじゃないですか。火攻めに水攻め、その上、石をぶつけるなんて! どこまで私をいじめれば気がすむんですかー!」
【ユニシス】「……シリウス様!?」
【アクア(オフ)】「あ、ユニシスだ。けほけほ……けむいよ〜」
【ヨハン(オフ)】「か、間一髪……結界が間に合って、よ、よかった……」
【アーク】「バカ先生! アクア!」
【リュート】「早くはしご! 君たち、足場を作れ!」

○騎士院その他の人たち、わらわらと足場を作り始める。
○岩がどけられ、お互いの顔が見える。

【ソロイ】「……紙一枚のズレだったか。……やるものだ」
【ユニシス】「……本当に……三人とも? ……よっ」

○ユニシス、下の洞窟に降りる。

【シリウス】「わっ、危ないっ! とと!(ユニシスを受け止める)」
【アクア】「きゃっ!」
【ヨハン】「こ、こらユニ! 危ないでしょう、飛び降りるなんて!」
【ユニシス】「だ、だって。早く近くで顔が見たかったから」
【シリウス】「君ねえ、受け止めてあげた私に対して、お礼のひとつもいいたまえよ」
【ユニシス】「うるさいな、お前なんてオマケだよっ」
【シリウス】「あっ、ひどい」
【ヨハン】「こら、ユニ。シリウス様に謝りなさい」
【シリウス様がいなかったら、貴方が来ても私たちは助からなかったのですから」
【ユニシス】「え、……そうなの?」
【シリウス】「……自分を助けたら、彼らも助かった。……それだけのことです。……お互いさまでしょ」
【アクア】「今の魔法……打ち上げたの、ユニシス?」
【ユニシス】「う、うん。お前が作ってた花火、使っちゃった。ごめん」
【アクア】「いいよ。途中でわかんなくなって、ほっといた奴だから。起動したのがむしろびっくり」
【ヨハン】「え、そうなんですか」
【アクア】「ごめんね、先生。実は私、いつもテキトーなの」
【ヨハン】「あちゃ、てっきり全部わかってるのかと……とほほ」
【ユニシス】「あの、先生。その」
【ヨハン】「はい?」

○静かなBGM。

【ユニシス】「……俺……その……」
【ヨハン】「なんですか?」
【ユニシス】「……ごめんなさい。……俺、忘れてました。なんで忘れてたんだろう。先生と初めて会ったときのこと。俺を助けてもらった時のこと。……俺もあんな風になりたいって思ってたこと。だから、無理言って先生に弟子にしてもらったのに」
【アクア】「ユニシス」
【ユニシス】「……お願いします、先生。もう一度、チャンスを下さい。俺、魔導師になりたいんです」
【ヨハン】「……もちろんですよ。あなたのその言葉を、ずっと待っていました」
【ユニシス】「……先生」
【アクア】「……あ、ユニシス泣いてる」
【ユニシス】「ばっ、泣いてないよ!」
【シリウス】「やれやれ、子どもはいいよね。気楽に泣けて」
【アクア】「あら、泣きたかったらいつでも泣かせてあげるわよ。ふふ」
【シリウス】「……遠慮しておきます。やれやれ、疲れた。じゃあ、アクア殿。同盟解消ということで。後は、がんばって」

○シリウス、アクアの頭をなで、はしごに上がる。

【ヨハン】「……シリウス様」
【シリウス】「はい?」
【ヨハン】「ありがとうございました」
【アクア】「ありがと」
【シリウス】「は、はあ?」
【ユニシス】「……アクア? 先生?」
【アクア】「……あなたがいたから、今はあるのよ。オマケなんかじゃないわ。先生と私とあなたは、ちゃんとつながってた。ほんとうよ」
【シリウス】「アクア殿。……ふむ、なるほど。……それでは、お言葉に甘えて今日のことは三人だけの秘密にしておいて頂けると嬉しいですねえ」
【ヨハン】「もちろんです」
【アクア】「うん」
【シリウス】「ふふん、いいですね。秘密の共有。それだけでも祭りの価値はあったかな」
【ユニシス】「な、なんだよそれっ! ずるいぞっ。俺が、一番頑張って、助けたのに! なんで三人だけの秘密とか言ってるんだよっ!」
【シリウス】「はは、そうやってカッカするから、いつまでたっても君は子ども扱いなんだよ。アクア殿、約束忘れないでくれたまえ。私は必ず星を手に入れる。そうしたら、君は私の花嫁だよ。覚悟しておきたまえ」
【ユニシス】「な゛!」
【アクア】「まあ、たのしみ。ふふ」
【ヨハン】「やれやれ、シリウス様が本気になったら、本当になりそうで怖いですね」
【ユニシス】「なな、何の話なんだよ。全然わかんないよ! 先生、アクア、説明してよ!」
【ヨハン】「説明してもたぶん、わからないと思いますしねえ」
【ユニシス】「な、な、な、なんで三人だけ薄笑いなんですか」
【ずるいですよ! できない、できない、ぜーったいできなーい!」
【アクア】「そんなことないよ。……できるよ。……できないって思ったらそこで終わり。……だから、ユニシスとわたしはもう一度会えたんでしょ?」
【ユニシス】「アクア」
【アクア】「……私ずっと信じてた。大丈夫。ユニシスは来るって」

○お腹が鳴る。

【アクア】「……またきっと、ユニシスのオムライスが食べられる日が来るって」

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