「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

七 クエスト・クエスト

【ヨハン】「……。(夜の山道をヨハン歩いていく)」

○五メートルくらい後ろに、こそこそシリウスとアクアのふたり組。

【シリウス】「どんどん人気のないところに入っていきますね〜。どう思います、ボビー」
【ボビー】「ヒミツ♪ヒミツ♪ヒミツのニオイ〜」
【アクア】「……先生、何か拾ってる……? 荷物もつの、嫌いなのに」
【シリウス】「逢い引きだったら面白いのになあ」
【アクア】「そうだったら……ぜひとも紹介してもらわないと。小姑の血がさわぐわ……。(アクア、手をわきわきさせる。変なSEあっても面白いかもしれません)」
【シリウス】「アクア殿、その手つき、女の子はやめましょうね。うん」

○風の音が強くなる。ヨハン、それにあおられる。

【ヨハン】「やれやれ、運がない。雨が降りそうだ。最近の雨で、地盤がゆるくなってますしね……さて、戻るか続けるか……」

○しばしヨハン思案しようとするところへ、ポツポツと雨足。どんどん強くなる。

【ヨハン】「わっ……これはまずい」

○離れたふたりの方へ走っていく。雷の音が鳴り始める。

【シリウス】「わっ、まずっ……こっち来ます!」
【アクア】「シリウス、あっちの木に登って! かくれるのっ」
【シリウス】「わ、わかってますよ! うう、変なことになっちゃったなあ」

○シリウス、木登りを始めようとした時、大きな落雷。木の近く。

【アクア】「きゃ……!」
【シリウス】「うわあああああああ!」
【ヨハン】「……わっ!」

○木が倒れる音と、土砂崩れの大きな音。
○しばらく続いた後、静かに。雨はもっと酷くなっていく。
○場所切り替わります。神殿内部。雨は降り続けています。
○ユニシスとプルート、勉強しています。

【プルート】「ほら、ここが間違っているんですよ。ええと、例題の四。さっき似たようなひっかけがあったでしょう」
【ユニシス】「あ、う、すみません。星読み様。……せっかく貴重な時間、さいてもらってるのに」
【プルート】「いいんですよ。どのみち私も勉強の時間ですからね。ひとりよりふたりの方が、楽しいですから。なかなかこんな機会もありませんしね。ヨハンの従者、ではなくあなたという人を知ることができて、私も嬉しいです」
【ユニシス】「あ、ありがとうございます」
【プルート】「しかしソロイにも困ったものだ。預かるなどと言っておいて、結局はほったらかしなんだから」
【ユニシス】「……あ、いえ、その。ソロイ様には感謝してます。ここ以外、俺、行くところないし。……神殿の人たちは悪くないです。……なんか、調子狂うな」
【プルート】「はい?」
【ユニシス】「……星読み様もソロイ様も偉い人だから。もっとふんぞりかえってると思ってた」
【プルート】「あはは、効果のある相手ならば、私もふんぞり返りますよ。それが仕事ですからね。(プルート、教科書を閉じる)ヨハンもそうでしょう」
【ユニシス】「っ」
【プルート】「ケンカをしたそうですね。なぜ?」
【ユニシス】「……先生は俺がいらなくなったんだと思います。俺よりも、アクアの方が魔法の才能があるから」
【プルート】「……なぜ、そう思うんです?」
【ユニシス】「なぜって……それは、なんとなく。……わかる。あいつが来てからだし。先生が変わったのは。……俺、これからどうしようかなあ。……魔法院には、戻りにくいし」
【プルート】「あなたは、魔法が使える。それで生活はなりたつのでは?」
【ユニシス】「まだ階位ももらってないのに、ムリですよ。それは、先生しかくれないものだし。……試験だってあるし。さっきも言ったけど、俺、才能ないみたい。星読み様だってさっき、呆れたでしょう。俺、魔法院にいるのに星読み様に魔法の勉強を手伝ってもらってる。おかしいよね、それ」
【プルート】「あなたは、魔法が嫌いなんですか?」
【ユニシス】「嫌い?」
【プルート】「才能がないから、あきらめてしまえる程、魔法はあなたにとってどうでもいいものなのですか?」
【ユニシス】「……星読み様」
【プルート】「ヨハンはいつもあなたのことを考えていますよ。そうでなければ、誰がソロイのところに預けるものですか」
【ユニシス】「……でも、俺」

○廊下でばたばたと音。ソロイが部下を引きつれている。

【プルート】「……なんでしょう、さわがしい」
【ユニシス】「ソロイさんの足音だ」

○ソロイ、プルートの部屋に入ってくる。

【ソロイ】「……と、ユニシス? なぜ、こんなところに」
【ユニシス】「え、あ、いや……その」
【プルート】「ソロイ、放っていてそれはないでしょう。私が呼んだんですよ。色々話せて、勉強になりました」
【ソロイ】「……プルート様、火急のお話が。ユニシス、席をはずしていろ」
【ユニシス】「あ、はい」
【プルート】「何をそんなに慌てているのです? お前らしくもない」

○廊下をばたばたと走る音。

【神官】「(オフから)ソロイ様、(扉を開けて) 二回目の崩落がありました! 早く、いらして下さい!」
【ソロイ】「……下がれ。まだ、その件は……」
【神官】「ですが、シリウス様がいらっしゃるのですよ!? ヨハン殿と星の娘候補も一緒です。三人とも土砂に埋まっていたら、早く掘り起こさないと……!」
【ユニシス】「……なんだって?」
【プルート】「……どういうことです。……何が起きました、ソロイ!」
【ソロイ】「ここ最近の雨で、山間地帯には土砂崩れの兆候がありました。それに、どうやらシリウス殿、ヨハン殿、アクア殿が巻き込まれたらしいと。……現在行方不明です」
【ユニシス】「……先生。……アクア……うそ……だろ?」

○雨の音、大きくなる。

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