「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

十四 エピローグ

○テニス大会をやった丘。

【シリウス】「えー、それでは大変規模が小さくなりましたが……花火大会開催〜!」
【ボビー】「カンパーイ!」

○拍手と乾杯。ガヤガヤ。あちこちで小さな花火の音
○壇上でシリウス、プルート、ソロイの小話がBGM上で流れているというのは、さすがに聞こえないですよね?

【アクア】「かんぱーーい……」
【アーク】「……本当にショボいな。クラッカーって言わねーか、これ?」
【葵】「悪かったな、それは私が作ったものだ」
【アーク】「げ」
【ヨハン】「あはは、葵さんにしては上出来ですよ。マリンさんもよくお手伝いして下さいました」
【マリン】「えへへ、頑張りましたあ。クラッカーごとに中身を変えてあるんですよ」
【アーク】「へえ、小さいなりに考えてはあんのか。……リュートのはどんなんだ?」
【リュート】「えっ? あ、うん。……まだやってなかった」
【アーク】「何をぼーっとしてんだ? 俺の風邪がまたうつったとか?」
【リュート】「そ、そんなんじゃないよ。ただ、ユニシスが来てないなって、思って」
【ヨハン】「ああ、むくれてるんです」
【葵】「なに、またか。お主もこりぬな」
【ヨハン】「はあ、今度は私でなくて。アクアさんとユニなんですけど」
【アクア】「……『オムライスと俺の魔法を同じ天秤にかけるな』って怒られた」
【アーク】「ぶっ、あはははは、そりゃそーだ!あの時、傑作だったもんなあ!」
【葵】「あ、哀れじゃの……。……うむ、アクア殿、あれはおぬしが悪い」
【アクア】「む〜……本当のことを言っただけなのに……」
【リュート】「そっか、だからここに来てないのか」
【マリン】「あ、それじゃあ私が探してきましょうか? ユニシスさん、目立つからすぐ……(アーク、マリンの口を塞ぐ)」
【アーク】「ばか。おまえが行ってどーすんだ」
【マリン】「むむ〜! ひどいですよ、サンドイッチ詰め込むなんて!」
【リュート】「アクアさん、君がいかなくちゃね」
【アクア】「え……どうして? 先生の方がいいよ」
【ヨハン】「いいえ、アクアさんの方がいいですよ」
【アクア】「……ええ? ……なんで?」
【リュート】「……僕と約束したでしょ。帰ってきたら優しくするって」
【アクア】「……優しくなかった?」
【リュート】「とても」
【アクア】「……むう……そうだったの。……困ったわね」
【リュート】「はい、サンドイッチとジュース。ふたり分ね」
【アクア】「……持っていくの? 連れてくれば早いのに」
【リュート】「いいの。これは僕からのお詫びだから」
【アクア】「……どういうこと?」
【リュート】「ユニシスに言っておいて。花火、すごく綺麗だったって。……きっと、僕忘れないよ」
【アクア】「……わかった」
【リュート】「はい、いってらっしゃい」

○アクア歩き出す。パーティーの喧噪が離れていく。

【アクア】「……むう……最大限の讃辞のつもりだったのに。……むずかしいわ、優しくって」
【アクア】「……リュートのお詫びっていうのもわかんないし……。むー」

○何か踏む音。

【ユニシス】「いてーーー!」
【アクア】「あ、踏んだ。ごめん」
【ユニシス】「おおお、お前なあ! 隠れているのを見つける前に、踏むってのはどーいうことだ! 順番が違うだろ、順番が!」
【アクア】「……あら、隠れてたの? なんで」
【ユニシス】「うっ、それは……お前が見えたから」
【アクア】「どうして私から隠れるの?」
【ユニシス】「……ふん、こっちよりあっちの方が楽しいだろ。いいじゃん、俺なんか捜さなくたって」
【アクア】「……? 怒ってる?」
【ユニシス】「べつに!」
【アクア】「む〜……べつにいいけど。はい、これ。ユニシスのぶん」
【ユニシス】「……え」
【アクア】「いらいらする時は食べるのが一番。まる。……みんな待ってるよ。……それを伝えに来ただけ。それじゃ」
【ユニシス】「ま、待てよ!」
【アクア】「……なに?」
【ユニシス】「……これ、ふたり分あるけど。お前のじゃないの」
【アクア】「うん。そうだけど……私は嫌われてるみたいだから。いない方がいいかなって」
【ユニシス】「ばっ……なんでそーなるんだよ!」
【アクア】「……? なんでって、私が来たら逃げたし。……先生の方がよかったよね?」
【ユニシス】「……違うよ」
【アクア】「……え?」
【ユニシス】「お前だって、先生の方が」
【アクア】「……どういうこと?」
【ユニシス】「……そ、それは……それは」

○ひときわ大きな花火の音。

【アクア】「わ」
【ユニシス】「うわっ!」
【アクア】「あ……先生の花火だ。きれいだね」
【ユニシス】「……はあ、もういいや。……お前そういう奴だよね。……ほら、手ぇ貸してやるから、立て。みんな待ってるんだろ」
【アクア】「……あ、うん。ユニシス」
【ユニシス】「……なに?」
【アクア】「ハゲみっけ」
【ユニシス】「え、うそっ!」
【アクア】「うそ」
【ユニシス】「お、お前なあ……!」
【アクア】「よかった。いつもどおり。治った」
【ユニシス】「アクア?」
【アクア】「……やっぱりここにあるみたい。私の『しあわせ』」

アーカイブ情報

[初出・底本]ドラマCD Fantastic Fortune 2 〜Aqua Balance〜

[発売元]マリン・エンタテインメント

[発売日]2004年5月29日

[改稿]底本より誤字脱字・慣用表現の修正

ゆうきあずさ

「Aqua Balance」は当時のCD収録時間の限界があり、冒頭のアクアのナレーションが削られています。アクアは呼吸の間合いが多いキャラクターだったので、加味して脚本を書くべきでした。反省どころ。

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