「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD2「Aqua Balance」

四 ムネノイタミ

【ヨハン】「……どういうことです。ちっともできていないじゃないですか」
【ユニシス】「……う……」
【ヨハン】「……最近、騎士院に出入りしていることと関係がありますか?」
【ユニシス】「せ、先生知って……」
【ヨハン】「ソロイ様にお聞きしました。書庫の鍵を貸したと。けれど、その成果も私には見えません。騎士院と交流するのはよいことですが、それで勉強がおろそかになったら、本末転倒でしょう」
【アクア】「……あれ、じゃあ……ユニシス何してたの?」
【ユニシス】「うっ……そ、それは……う……」
【ヨハン】「あなたは魔導師になりたいと思って、私に弟子入りしたのでしょう。もっと真剣になりなさい」
【ユニシス】「……し、真剣にはやってますよ。だ、だけど」
【ヨハン】「後から勉強を始めたアクアさんよりできていない。それに何か言い訳があるとでも?」
【ユニシス】「そ、それは……最近色々忙しくて。こ、こいつが増えたから、その分面倒が多いんですよ! メシだって作らなくちゃならないし!」
【ヨハン】「……ユニ……人のせいにするなんて。……私をこれ以上がっかりさせる気なんですか」
【ユニシス】「……俺……」
【ヨハン】「……わかりました。あなたには罰を与えます。花火作りは、あなたには参加させません」
【ユニシス】「そんなの、ひいきですよ! 本当は、俺の方がずっとできるのに! 最近のはたまたまです! 俺だって、こいつさえいなきゃ!」
【アクア】「……」
【ヨハン】「ユニ!」
【ユニシス】「……っ……いいですよ、もう!」

○ユニシス、荒々しく部屋を出て行く。

【アクア】「あっ……」
【ヨハン】「追いかけなくていいです。アクアさん」
【アクア】「でも」
【ヨハン】「……たまには薬です。それに、彼は自分の不徳をあなたのせいにした」
【アクア】「……ねえ、先生。ユニシスが嫌いだから、先生は怒るの?」
【ヨハン】「……いいえ。……アクアさんには、まだわからないかもしれませんね」

○ヨハン、アクアの頭を撫でる。お腹が鳴る。

【ヨハン】「あ、すみません。お昼食べてないんですか。今、何か作らせますから。待っていて下さいね」
【アクア】「うん……」

○ヨハン退室。

【アクア(M)】「その時、ムネがちくっとした。一杯、何度もちくちくした。お腹が鳴った。ちがうんだけどなっ、って。……お腹はすいてる。……とてもすいているけれど。だけど、それを満たすのは……ちがうんだと思った。それじゃない」

○お腹が鳴る。

【アクア(M)】「……私はアクア。記憶喪失。すべてを失ってここにきた。だから、わかる。……何かが無くなる時は、必ずこの痛みがあるってこと」
【アクア】「……私、また何か無くしたのかしら?」

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