「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD3「Aoi Romance」

四 鏑矢

○吹き抜けのあるホール。

【プルート】「このホールでしたら問題ないでしょう。私たちは階段の上から見渡すこともできるし」
【マリン】「そうですね。近すぎるとあぶないですし」
【アクア】「……血が飛び散ったら、洋服も汚れるしね……。ふふ……」
【プルート】「ざ、残念ながら模擬刀です」
【葵】「しかし、審判はどうする。プルート殿は安全を確保せねばならぬ人故、ありえぬし。私たち三人でやるのか?」
【マリン】「えっ、私たちもですか!」
【シリウス】「ああ、それだったら葵殿に審判はお願いするよ。いいだろう、ソロイ殿」
【ソロイ】「……異論はありません」
【葵】「わ、私ひとりでか?」
【シリウス】「そうそう、三人の中ではあなたが一番冷静で公平そうだからね!」
【アクア】「まあ、しんがいだわ……」
【プルート】「アクアさん、手をわきわきして言っても説得力無いです」
【アクア】「……ちっ」
【プルート】「葵さんは騎士院にいる方ですから、剣もお詳しいでしょう。私もそれが一番いいと選択だと思いますが」
【葵】「うーむ……ま、別に私が戦うわけではないがな。良いぞ、受けよう」
【マリン】「あはっ、葵さん! 頑張って下さいね!」
【シリウス】「よーし、それじゃ始めよう! いちばんのり〜!」
【ボビー】「とつげき〜!」

○シリウス、階段を下り始める。

【ソロイ】「……やれやれ」
【葵】「ソロイ殿、やりすぎてはいかんぞ。あれであの男は重要人物なのだろう」
【ソロイ】「わかっています。……ですが、絶好の好機ではありますので。……少しくらい痛い目は見て頂くつもりですよ」
【葵】「おぬしは加減などできぬであろうが」
【ソロイ】「その時はその時ですね。……では。(階段を下り始めるソロイ」
【葵】「あ、これ!」

○葵、それを追いかけて。階段下、ホール。

【シリウス】「さて、はじめましょうか! (抜刀」
【ソロイ】「……望むところです。(抜刀」
【葵】「まてまて、まずは握手からじゃ。私が審判する以上、礼は守ってもうぞ。ほれ、手を出せ」
【シリウス】「ええ〜、男と手なんか握りたくないですよ」
【葵】「文句を言うな! ほれ、私も握ってやるゆえ。よいな、くれぐれも礼を逸した戦いなどしてはならんぞ」
【ソロイ】「……でしたら誓いを立てましょう。魔法で署名を書けばよい。拘束の言葉くらいは覚えていますね、葵殿」
【シリウス】「ええっ、そこまで本格的にやるんですか? 決闘じゃあるまいし。約束破ったら痛い目みるあれでしょう? ……いやだなあ……」
【ソロイ】「守ればいいだけの話です。……さあ、葵殿」
【葵】「う、だが、私は魔法とは相性が悪くて……その……自信が……」
【ソロイ】「あなたは候補でしょう。苦手があっては困ります」
【葵】「う……わ、わかった! どうなってもしらんからな!」
【シリウス】「あんまりきつい拘束は嫌ですよ〜?」
【葵】「うるさいも気が散る! さあ、手を私とつなげ。……いくぞ。『ここにありしは契約の剣。火柱熱く鍛えしは、不正不実を焼き尽くす。……ふたりの間に解けぬ縛りを……!」

○ソロイとシリウスの手を葵がつなごうとすると、漏電したような破裂音。シリアスな雰囲気に。

【ソロイ】「っ……!」
【葵】「……痛っ……しまっ……暴走した……!」
【シリウス】「うわあ、まずっ……!」

○爆発音。

【葵】「……うわ!」
【シリウス】「……つっ!」
【ソロイ】「……!」

○三人三方向へ吹っ飛ばされる。壁がいくつか壊れる。

【マリン】「きゃーーー! シリウス様!」
【プルート】「ソロイ!」
【アクア】「……しっぱいした……?」

○マリンたち叫びながら駆け下りてくる。足音。

【葵】「くっ……くそ……どうして私が魔法を使うとこうなるのだ……!」
【シリウス】「……いたた……」
【ソロイ】「……つ……」

○マリンたち階段を下り終わって。

【マリン】「大丈夫ですか、みなさん!」
【アクア】「……生きてるみたいね」
【シリウス】「うう、私の高貴な髪が……ホコリでどろどろですよ〜」
【プルート】「葵さん、大丈夫ですか? さ、手を貸します」
【葵】「すまなんだ。……どうも私が魔法を暴走させてしまったようでな……。面目ない」
【プルート】「いえ、それを言ったのはソロイでしょう。仕方ありませんよ。まったく、融通の利かない男です。少しは反省して……どうしました。ソロイ」
【ソロイ】「……っ」
【マリン】「ソロイさん、頭痛いんですか? 打っちゃいました?」
【アクア】「あらあら……いたいのとんでけ、してあげようか?」
【シリウス】「あ、いいなあ〜それ! 私も痛いんだけどな〜」
【葵】「ソロイ殿、どこを打った? 医者を呼んだ方がいいか?」
【ソロイ】「……それは私のことですか」
【マリン】「え……」
【プルート】「ソロイ……? な、何を言っているのです。お前は、お前ではないですか」
【ソロイ】「……私は、私。……ではあなたは?」
【シリウス】「ソロイ殿。まさか、プルート殿がわからないなんてことは」
【ソロイ】「……誰なんですか?」
【プルート】「ソロイ……!」
【アクア】「ぱあになってる……」
【マリン】「そ、ソロイさん、わ、私のことは!?」
【ソロイ】「……初対面ではわかるはずもありませんが」
【マリン】「……そ、そんなあ……!」
【葵】「記憶喪失……?」
【ソロイ】「……みなさん、何をそんなに……驚いているのですか?」
【プルート】「……っ」
【シリウス】「(気絶するプルートを受け止めながら)わっ、プルート殿! し、ししし、しっかり! あなた、一番偉いのでしょうが! 気絶なんてずるいですよー!」
【アクア】「わたしもたおれたい……」
【マリン】「私もです〜! うう、き、きおくそうしつ……」
【シリウス】「うわああ、ふたり共! 医者、医者を! あー、もうこのさいヨハン殿でもいいですよ! 呼んできなさい! 誰か!」

○その後ろで神官たちがざわめいている。シリウスに対して返事をしたり。

【ソロイ】「記憶喪失。……あなたがたは私を知っている。だが、私はあなた方を知らない」
【葵】「ソロイ殿……」
【ソロイ】「一体私は誰で……ここはどこなのですか……?」

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