「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD3「Aoi Romance」

三 雲隠れ

○ドアを開ける音・アクアとマリン同時くらいで。

【アクア】「しつれい……」
【マリン】「失礼しまーす!」
【葵】「ソロイ殿。候補三人、参上致した。ん?」
【プルート】「こんにちは。みなさん」
【葵】「……プルート殿?」
【アクア】「あら、どうしてあなたがソロイの部屋に……? ……まさか、また懲りずにテニス大会りたーんず……?」
【プルート】「い、いえいえ! そこまで私だって単純じゃないですよ」
【マリン】「でも、いつもはソロイさんがプルート様の部屋に行くじゃないですか?」
【プルート】「あはは、今日は私もあなた方と同じ立場ですから」
【葵】「おぬしが私たちと? どういう意味だ……?」

○ドアを開けて、ソロイ入ってくる。

【ソロイ】「……揃っているようですね。よろしい」

○つかつかと回り込んで、プルートの側へ。

【ソロイ】「プルート様、こちらの席にお座り下さい。星の娘候補も、そちらのソファに」
【プルート】「うん、ありがとう」

○みんなめいめい席に着きながら。

【マリン】「あ、あの〜……今日の呼び出しって……なんでしょう?」
【葵】「テニス大会でないことはプルート殿から聞いたが、また二院についてなら勘弁願いたいぞ。アークのやつが張り切りすぎて困る」
【アクア】「……先生もぎっくり腰になるしね。あとがたいへん……」
【ソロイ】「ご心配なく。私もあのような催し物は、金輪際勘弁して頂きたいですから」
【アクア】「……でも、利用したくせに。マリンまで怪我した……」
【ソロイ】「……」
【マリン】「あ、あははっ! い、いいんですよ〜! あれはっ、私が勝手に転んだようなものですから! ソロイさん、先をどーぞ!」
【ソロイ】「(少し咳払い)……本日集まって頂いたのは、単純なことです。……ぬきうち試験を致します」
【アクア】「ぬき」
【マリン】「うち……」
【葵】「ぬきうち試験じゃとーーー!」

○一転音楽お葬式っぽい感じで。

【マリン】「なななな、どどどどと、どーしてそ、そんなことを!?」
【アクア】「……唐突すぎるわ……」
【葵】「そ、そうじゃそうじゃ! こ、心の準備というものがあろう!?」

○ソロイ、早速ペンをめいめいに渡す。机に置く音。

【ソロイ】「準備がないから、抜き打ちだと思いますが?」
【アクア】「へりくつ」
【マリン】「テロ反対!」
【ソロイ】「意味がわかりません。……とにかく、やるものはやりますので。もちろん、最下位の方にはそれなりのペナルティを与えます。よろしいですね」
【プルート】「一応、私は止めたんですけどね。……私も前回のことがあって、その、ごめんなさい」
【葵】「い、いや、おぬしに謝ってもらうことではないが」
【プルート】「いえ、だってこれ、私怨ですし。ねえ」
【ソロイ】「……心外です」
【プルート】「ソロイもこの間の件を根に持っているんですよ。テニス大会の仕切り直しの時、珍しくシリウス殿が茶々を入れてこなかったでしょう? ……私がソロイに言ってずっと相手をさせていたのですよ」
【アクア】「あらあら……」
【マリン】「ソロイさんと、あのシリウス様がふたりっきり……うわあ」
【葵】「それは……気の毒じゃったのう、ソロイ殿」
【ソロイ】「同情されるいわれはありませんし、私怨でもありません。くだらない詮索はおよし頂けませんか」
【プルート】「……と、まあ譲りませんので。せめて私も最下位を争おうかと思ってここにいるわけです。ふふ」
【葵】「なるほど?」
【ソロイ】「プルート様が最下位になるなどあり得ません」
【プルート】「……ふふ、どうでしょう?」
【アクア】「プルート、白紙でごー」

○アクア、ソロイに軽く叩かれる。

【ソロイ】「アクア殿」
【アクア】「……ちっ」
【ソロイ】「プルート様はあなた方とは別格です。手を抜いてもまず、最下位などあり得ません。……なにより、人の失敗をあてにするなど、候補としての資質を疑うことになります。そうではありませんか、プルート様」
【マリン】「……う……」
【プルート】「……うーん……くぎを刺されましたか……」
【ソロイ】「いいですね。……真剣にやるように。……では、テストを始めます。……まず名前を……」

○ばたばたと廊下で音がして、シリウス乱入。

【ボビー】「呼ばれてとびでたー!」
【シリウス】「じゃっじゃっじゃーん! シリウスあんどボビー、ただいま参上! 聞いたよ、聞いたよ〜! なんか面白いことするんだってー?」

○無言でシリウスを押しのけて ソロイ扉を閉める。

【シリウス(オフ)】「(扉の向こうから)わわっ、酷いじゃないですか、ソロイ殿! 締め出しなんて、ずるいずるい〜!」
【ソロイ】「現在、大変取り込んでいます。お話はまた後日に」
【シリウス(オフ)】「そんなこと言って、また私をハブにする気でしょう! 仲間はずれは寂しいじゃないですか〜!」
【葵】「……お、驚いた……。どこから聞きつけて来たのだ、あやつは?」
【マリン】「あはは、シリウス様って早耳っていうか、地獄耳だから……」
【アクア】「……かべにみみあり、しりうすあり。……ってどっかで前、言ってた……」
【プルート】「……うわあ、めったなこと喋れませんね。それ」

○シリウス、無理矢理入ってくる。

【シリウス】「あ、やっぱり私に無断で楽しそうなことをやってますね! テニス大会に次いで二回目! まったく許し難い!」
【ソロイ】「……楽しくはないと思いますが」
【マリン】「あの〜、テスト中なんです、シリウス様」
【アクア】「……しりうす、うるさい」
【葵】「おぬしも受けるか?」
【シリウス】「ええー、勉強なんてしているんですか? こんな天気がいいのに? それって……」
【ボビー】「クラーい、サムーい!」
【ソロイ】「天気の善し悪しと勉学は関係がありません。……見てのとおり、立て込んでおりますので、お引き取りを。シリウス様」
【シリウス】「あっはっは、私には立て込んでいるように見えないから、ノープロブレム!」
【シリウス以外の一同】「(ため息をつきながら)はあ〜……」
【葵】「そ、そうだな……おぬしは周りの空気とか状況とかは読むつもりがないのだったな……」
【シリウス】「あはは、照れるな。そんなに褒めないで下さい」
【葵】「これっぽっちも褒めておらん! だいいちおぬしは人の話を聞かなさすぎる! 自分の話を聞いて欲しかったら、まず相手の話を聞く! これは人との関わりにおいて、基本の基本であろう!」
【シリウス】「わ〜、葵殿は怒っても美人だなあ」
【ボビー】「シビレル〜!」
【葵】「……燃やすぞ?」
【ソロイ】「……とにかく。本日私たちは忙しい。……お引き取りを」
【シリウス】「嫌です」
【ソロイ】「……私は同じことを繰り返すのは嫌いです」
【シリウス】「私もですよ、ソロイ殿? テニス大会でハブにされたこと、私はすごーくすごーく、寂しかったんですからね!」

○ふたり火花を散らす。

【葵】「やれやれ、子どものケンカか……」
【アクア】「シリウスも根に持ってるのね……テニス大会……」
【マリン】「みたい……ですね……あはは……」
【プルート】「ふう……仕方がない。……でしたら、こうしましょう。ソロイ、シリウス殿。ふたりが手合わせるというのはいかがですか」

○プルートの提案で、空気が締まる。

【ソロイ】「プルート様」
【マリン】「えっ、ふたりが剣で戦うんですか?」
【アクア】「……まあ……血をみるわね……。……わくわく」
【プルート】「親善試合の形を取って、私の許可があれば神殿内でも抜刀できます。負けた方は勝った方の言うことを絶対に聞く。ソロイが負けたらテストは中止。シリウス殿が負けたらお引き取り頂く。それでいかがですか、シリウス殿」
【シリウス】「私は願ったりですねえ! 銀円の騎士と手合わせできるなんて、またとない光栄ですよ!」
【ボビー】「ワーイ、コテンパンー!」
【ソロイ】「……良いのですか? ……殺してしまっても」
【プルート】「こ、こら! だめに決まっているでしょう!」
【ソロイ】「……冗談です」
【プルート】「……(咳払いして)と、とにかくそれでこの場は収めましょうね。約束ですよ、ソロイ、シリウス殿。星に誓って」
【ソロイ】「はい」
【シリウス】「はーい♪」
【葵】「……と、いうことは……私たちが応援するのは……」
【マリン】「シリウス様! 頑張ってくださいね! 私たちのために!」
【アクア】「……ふれー、ふれー。し・り・う・す! ……テストかいひのために」
【シリウス】「なんと! こんな嬉しい声援を頂けるとは……。おまかせ下さい、この私が姫君たちを美しい空の下へ誘ってさしあげますよ。魔王が倒れる日は近い!」
【ソロイ】「……シリウス様、さっさとドアから出て頂けませんか。あなたが扉を塞いでいる」
【シリウス】「とと、あ、ごめん」

○ドアを開ける音。みんな出て行く。

【葵】「……まったく、あれでそれなりの剣の使い手なのだから、嫌になるのう」
【プルート】「あはは、でも楽しみですね。どちらが勝つでしょう? 葵さんは、どちらに賭けます?」
【葵】「……そんなもの、わからぬさ。できれば引き分けがよいな」
【プルート】「どうしてですか?」
【葵】「ふたりとも、根に持つ性分のゆえ、後始末が面倒でない」
【プルート】「……あはは、なるほど」
【葵】「……さて、本当に血が流れねばよいが」

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