「悪役令嬢と極道P」新連載のお知らせBlog

ドラマCD3「Aoi Romance」

ファンタ2ドラマCD - 3連作

  1. Marine Style(マリン主人公)※脚本監修のみ
  2. Aqua Balance(アクア主人公)
  3. Aoi Romance(葵主人公)

一 宴の前

○OPメインテーマ・一巻と一緒の処理です。

【葵】「青い、どこまでも青い海の真ん中に、その島はあった。ひとつの大きな島と、それに連なる小さな島。その場所の名は『アロランディア』。……というらしい」
【葵】「私は日本という国に住んでいた。やるべき使命も持っていた。魔を倒し、人々を守る。それが、私の命をかけて成すべき仕事だ」
【葵】「それは生まれる前から決まっていた、約束事だと思っていたのに……。私はなぜか、この青い海の島にいる。星の娘候補として。ここにかつていたという、神の宿る娘として。……ありえぬ話だが、この島の者はそれを信じているらしい」
【葵】「私という異邦人がここに流れついたのも、すべてはその神のはからいか。私の刀、紅丸とはぐれたのも……巫女の力がなくなったのも」
【葵】「海はすべての国をつなぐ。ならば、不安に思うことはない。いつかは帰れるし、会えるはずだ。私の故郷、あの砂浜、桜の並木道……私の刀であり、たったひとりの式、紅丸にも」
【葵】「……そう、私が、諦めなければ、探し出せるはずだ。それが、縁(えにし)というものだから」

二 朔月

○ラジオ体操第二のテーマ。いーち、にー、というかけ声が聞こえてくる朝。

【偉い騎士】「腕をおーきくあげて〜!」
【騎士】「おいっちにー!」
【騎士】「さんしー!」
【葵】「ふああ……。(体操をしながら)……いっちにい」
【葵(M)】「私の名前は日野平葵。日本という国で、魔を狩る巫女をしていたはずだった。そう、ほんの少し前までは」
【葵(M)】「だが、ある魔物と対峙した時に嵐に襲われ、私の眷属である刀の化身、『紅丸』と共に、この小さな島『アロランディア』に流れ着くとはめになった」
【葵(M)】「ひとりはぐれ、巫女としての力もない。だが、私の手にはなかったはずの『星のあざ』がついていた。それが私を救った。この国を治める神殿が、私を世界を救う『星の娘』とやらかもしれない、と言い出したのだ」
【葵(M)】「神の生まれ変わりだというその娘。……だけど私は知っている。それは私のことではない。私はこの国の者ではないから。案の定、私の他にふたりの候補が現れた。一安心だ」
【葵(M)】「やはり私ではないのだ。当たり前だ、私はあの国の巫女。だから私は、ひっそりと目立たぬようにせねばならない」
【葵(M)】「他の誰かの役目や運命を奪わないように。誰かの心にも、残りすぎたりしないように……」
【リュート】「おはよー、葵さん。(葵の肩を叩く)」
【葵】「わっ!」
【リュート】「とと、ご、ごめん。驚かせちゃった?」
【葵】「リュート! いいい、いきなり背後に立つでない!」
【リュート】「あは、ごめんごめん。でもさ、もう朝の体操の時間終わっちゃったし」
【葵】「なぬ? ……あ……」

○木枯らしのような風の音。

【葵】「どわっ、誰もいないではないか!」
【リュート】「うん、だから止めた方がいいかな〜って。ひとりでやってるのもむなしいでしょ?」
【葵】「ぐ、ぐおお……気づかんかった……! どれくらいやっていたのだ、私は……!」
【リュート】「うーん、しばらくおもしろくてみんな見てたけどね。飽きてもう僕だけ!」

○ショックを受けるSEなど。

【葵】「……ふ、不覚……」
【リュート】「あはは、ずいぶん考え事してたみたいだねえ」

○木の上、がさがさと動く。

【アーク】「あははっ、もう少しほっといてもよかったぜ。おもしろかったじゃん?」
【リュート】「アーク! ……また木の上なんかに登って。体操、さぼるならさぼるで、もう少し申し訳なさそうにしてなよね〜」
【アーク】「へいへい、ごめんなさい、リュート様っと!」

○アーク、木から葵の近くに飛び降りる。

【葵】「わっ! あ、危ないではないか! もっと離れて下りろ!」
【アーク】「着地しやすい位置にお前がいただけ。嫌なら見越してどけばいいじゃん。反応鈍いよな、お前」
【葵】「こ、この〜、ああ言えばこう言う!」
【リュート】「ま、まあまあ。あれ、アーク。何、そのバック。テニス用品みたいだけど?」
【アーク】「ふん、そのとーり! 今月の給料はたいて買ってやったぜ! プロ仕様のラケットを! 俺の本気とこの道具があれば、今度こそ天下を……取る!」

○ラケットを見せびらかすアーク。どらえもん的な効果あると面白いと思うのですが>音監様

【リュート】「ああ……もしかして……この間のテニス大会の……?」
【葵】「(呆れて)……まーだ、おぬしは根に持っておったのか……」
【アーク】「(逆ギレぎみに)ああ、持ってるよ、持ってて悪いか!? この俺が! あんな魔法院の奴らに! 負けたんだぞ!」
【リュート】「そうだったねえ。しかも大差で」
【アーク】「リュート、お前はなんでそんなにやる気がなさそーなんだよ! くやしくねーのか! あの馬鹿先生に一泡吹かしてやりたくねーのかーーー!」
【リュート】「興味? ありませーん」
【アーク】「なにーー!」
【リュート】「あのね、あくまでもこないだの騎士院と魔法院のテニス大会は交流会って名目でしょ。勝ち負けを根に持ったら、本末転倒……」
【アーク】「(リュートにかぶって)うるせー、うるせーー! 俺の人生にとって、負けっぱなしってのはあってはならねー汚点なんだよ!」
【リュート】「言っておくけど、僕、次はアークと組まないからね。葵さんと組むから」
【アーク】「げっ、なんでだよ!」
【リュート】「自分の胸に聞いてみたら?」
【葵】「これこれ、ケンカするでない。良いではないか、リュート。組んでやればよい。私はさほど、興味はないゆえ」
【リュート】「え、でも……」
【葵】「私はテニスのことなどよくわからん。勝つためにはやはり、おぬしとアークが組むのがよかろう。それに、私はしょせん部外者じゃ。おぬしらふたりが勝った方が、騎士院全体も盛り上がろう?」
【アーク】「おっ、たまにはいいこと言うじゃん! そーだよなあ!」
【リュート】「……まあ……葵さんがやりたくないなら……。別にいいけどね、それでも……」

○後ろからとてとて、とアクアとマリンの足音走ってくる。

【アクア】「あおいー」
【マリン】「葵さーん!」
【アーク】「んん? 田舎娘と、ガキじゃねーか。(アクアの足音加速して)」
【アクア】「(加速つけながら走ってきて)……とうっ」

○どかっと、アクアの跳び蹴り。

【アーク】「……★! □▼!(すごく痛そう)」
【リュート】「うわあ、いたそ……」
【アクア】「(着地して)……ぶい」
【マリン】「(拍手しながら)うわあ、打点高いですねー、アクアさん! 跳び蹴りなんて、すごーーーい!」
【アーク】「マリン……他に何か言うことはねーのか……っ?」
【マリン】「意地悪ばっかり言う人に、言うことなんてこれっぽっちもないですよー。ふんだっ」
【アーク】「て、てっめえ……」
【葵】「(アークをたしなめるように)おぬしが田舎娘などと言うからであろう」
【アーク】「田舎娘を田舎娘といって、何がわる……(途中でアクアの蹴りが入る)、がっ!」
【アクア】「悪役には……おしおき」
【アーク】「ったく、星の娘候補って奴らはとんでもねー女ばっかりだ……!」
【リュート】「自業自得だよ。……もうちょっと優しくできないの? もう」
【アーク】「する価値のある相手だったらな!」
【葵】「そのあたりにせい! まったく、おぬしらはいつでも騒ぎすぎなのじゃ。用件があってマリン殿もアクア殿もここに来たのであろう? 別にアークに蹴りを入れに来ただけでも良いが」
【マリン】「あ、そうでした! 私たち、葵さんを呼びに来たんですよ」
【アクア】「……ソロイが私たちを呼んでいるのよ。……星の娘候補を……」
【葵】「ソロイ殿が?」

【葵(M)】「……その日、その朝。初夏の緑も、空も、人も海も、いつも通りに生きていた。私の後見を務める騎士院のふたり、アークとリュートもいつも通り」
【葵(M)】「私と同じ立場である「星の娘候補」のマリンとアクアも、先頃少しわかりあった魔法院の者たちも、私たちを呼び寄せた神殿の者たちも。昨日、一昨日と変わらぬ朝を過ごしたに違いない。
【葵(M)】「……そう、あの時間までは」

1 2 3 4 5 6 7