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猫ト指輪ト蒼色絵本
天球図
○暗転。 親愛なるあなたへ ○一枚絵 マリンの手紙が机の上にある。汎用。 突然のお手紙でごめんなさい。思えばあなたにお手紙を書くのは、これが最初かもしれません。こんな手紙を書いたのは、私のお願いを聞いて欲しいからです。わがままかもしれないけれ... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
エンゼル・パイ
○港。セピア処理。 港で、きょろきょろしていたおじいさんに声をかけた。細くて固そうな杖を荒々しくついて、ぎろりと目線を右左、そそくさと周りの人は怯えて、逃げていく。——それを見つけた時は、実はちょっとだけ……。踏み出した足を止めようかなって思... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
Thanks,my Home.
○暗転。 本島から来た騎士様は、私の右手の星を見て言った。「貴女だ」……と。大きな、日に焼けたその人の指は酷くささくれていて、私の指にも白く跡を残す。ハンドクリームはいかがですか、と思わず言ってしまう程。一瞬キョトンとその騎士様は私を見据え... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
プロローグ – 猫ト指輪ト蒼色絵本
○補足 猫のデザインに首輪(指輪つき)を含めること。○暗転。 吾輩は猫である。名前はまだない。と、いうか。名前など呼ばれることがないし、必要ないので、つけないといった方が正しいか。吾輩はこの島で生まれ、適当に食べて、寝て、たまに野原を駆け回... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
星のランプ
○補足 三年後の神殿は女の子も就職できるようになりました。○神殿廊下。 【プルート】「それじゃ、今日はここまでにしましょう。お疲れ様」【神官1】「お、お疲れ様でした!」【神官2】「ご指導ありがとうございました!」【神官3】「あ、ありがとうござ... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
初恋
○暗転し、波の音。 潮騒。鳥の声。人々の歌う日常。見渡す限りの青。海。空。星読みの部屋から見渡すと感じる。ああ、ここはまるで、世界の果てのようだと。世界に『果て』というものが、本当にあるのかどうかは、わからないけれど……。 ○星読みの部屋。 【... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
rain
○路地裏。雨が降っている。 【プルート】「あ〜……降られました」 地面を雨粒が濡らし始めて、すでに十数分が経過している。不意の通り雨というわけではない。実際、周りの人たちは皆、傘をしっかり握りしめている。もっと酷くならないうちにと、足早に水た... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
僕らしく
○暗転。 気の遠くなるほど長い間、僕たちは人を見てきた。時に善意で、時に悪意で。注意深く、丁寧に、スミズミを。だから、わりとナメていたところはあって。……だから。姿形も、言葉も同じようにできるから、すぐに溶け込めるんじゃないかと思ってて。——... -
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黒猫
プロローグ ○暗転。 僕は君と結ばれる。だから、指輪を用意しなくちゃ。大事な、消してはいけない約束には、輝く何かが必要だから。今の僕にできること。それを精一杯考えて、祈った。空に。小さな光に。宇宙のかけら。まばゆいもの。——金でも銀でも宝石で... -
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夏影
○暗転。 じいり、じいり、と蝉が鳴く。緑色濃い竹藪の中、それに合わせ、私はひとりうめいた。じいりじいり。じいりじいり。叫ぶそれらにかき消えて、小さく頼りない私の声は、夏影の下、埋もれゆく。喧噪も度を超せば静寂となる。じいりじいり。じいりじ... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
日曜日
○暗転。 一年のうちで三十日間、神殿に勤める者は自由に休日を得ることができる。週末や祝祭日などは神殿は常に何かの集まりでごった返し、市井の者たちと同様の時間に休むことができないからだ。それはある意味、義務のようでもある。なぜなら、人は休ま... -
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紅の夢
○夕焼け空。テキストフェイスは紅丸です。 遙かを眺める。千里の果てを。海の向こうには何があるだろうと。——我のような者だけがある、楽園があるかと。その光景を夢想する。けれど、それはほどなく淡い吐息と一緒に、消える。皿のように目をこらしても、...