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猫ト指輪ト蒼色絵本
火打ち石
○暗転。 夏の残り香がまだ色濃い季節、私は新しい三人の生徒を受け持った。この国を治める神殿の、最高指導者であるプルート様の命によって。初めて会った時の彼女らの反応は様々で、驚き慌てふためく人、沈着冷静に受け止める人、大げさな程に礼儀正しい... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
24h
○暗転。 新しい朝が来た。希望の朝がー……。 ○ぢりぢりぢりりりと目覚まし時計。○一枚絵 寝起きのヨハン。 【ヨハン】「……あさ、しちじ。……あと、ごふん」 ○ドアが開く音。みんな三年後の立ち絵です。 【ユニシス】「おっはよーございまーす! 先生! 今... -
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導く者
○暗転。 クルクル、クルクル。回る運命。それをただ、見つめたあの頃。 【ヨハン】「そんなに欲しいなら、買ってあげましょうか?」【ユニシス】「え?」 ○港。セピア。 初めてアロランディアに下りた時、バザーで目についたそれ。別にねだったつもりはな... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
鳥籠
○暗転。 籠は嫌い。なんで嫌いかって、そりゃたったひとつ。――忘れたい事を思い出させるから。第一、鳥なんて籠で飼うもんじゃないだろう?空を自由に飛べる翼、人間にはいくら望んでも叶わない、飛行する特権を持った奴らだ。それを妨げる事なんて、しち... -
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十四歳
○暗転。 国によって違うけど、たいてい大人になる年ってのは全国共通っぽい。そうだな、だいたい十八歳が共通。たまに十六歳とか二十歳ってのもある。アロランディアは何歳なのかって、先生に聞いたら『十八歳』だって言ってたから、まあ普通かな。――だか... -
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天球図
○暗転。 親愛なるあなたへ ○一枚絵 マリンの手紙が机の上にある。汎用。 突然のお手紙でごめんなさい。思えばあなたにお手紙を書くのは、これが最初かもしれません。こんな手紙を書いたのは、私のお願いを聞いて欲しいからです。わがままかもしれないけれ... -
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エンゼル・パイ
○港。セピア処理。 港で、きょろきょろしていたおじいさんに声をかけた。細くて固そうな杖を荒々しくついて、ぎろりと目線を右左、そそくさと周りの人は怯えて、逃げていく。——それを見つけた時は、実はちょっとだけ……。踏み出した足を止めようかなって思... -
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Thanks,my Home.
○暗転。 本島から来た騎士様は、私の右手の星を見て言った。「貴女だ」……と。大きな、日に焼けたその人の指は酷くささくれていて、私の指にも白く跡を残す。ハンドクリームはいかがですか、と思わず言ってしまう程。一瞬キョトンとその騎士様は私を見据え... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
プロローグ – 猫ト指輪ト蒼色絵本
○補足 猫のデザインに首輪(指輪つき)を含めること。○暗転。 吾輩は猫である。名前はまだない。と、いうか。名前など呼ばれることがないし、必要ないので、つけないといった方が正しいか。吾輩はこの島で生まれ、適当に食べて、寝て、たまに野原を駆け回... -
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星のランプ
○補足 三年後の神殿は女の子も就職できるようになりました。○神殿廊下。 【プルート】「それじゃ、今日はここまでにしましょう。お疲れ様」【神官1】「お、お疲れ様でした!」【神官2】「ご指導ありがとうございました!」【神官3】「あ、ありがとうござ... -
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初恋
○暗転し、波の音。 潮騒。鳥の声。人々の歌う日常。見渡す限りの青。海。空。星読みの部屋から見渡すと感じる。ああ、ここはまるで、世界の果てのようだと。世界に『果て』というものが、本当にあるのかどうかは、わからないけれど……。 ○星読みの部屋。 【... -
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rain
○路地裏。雨が降っている。 【プルート】「あ〜……降られました」 地面を雨粒が濡らし始めて、すでに十数分が経過している。不意の通り雨というわけではない。実際、周りの人たちは皆、傘をしっかり握りしめている。もっと酷くならないうちにと、足早に水た...