-
猫ト指輪ト蒼色絵本
僕らしく
○暗転。 気の遠くなるほど長い間、僕たちは人を見てきた。時に善意で、時に悪意で。注意深く、丁寧に、スミズミを。だから、わりとナメていたところはあって。……だから。姿形も、言葉も同じようにできるから、すぐに溶け込めるんじゃないかと思ってて。——... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
黒猫
プロローグ ○暗転。 僕は君と結ばれる。だから、指輪を用意しなくちゃ。大事な、消してはいけない約束には、輝く何かが必要だから。今の僕にできること。それを精一杯考えて、祈った。空に。小さな光に。宇宙のかけら。まばゆいもの。——金でも銀でも宝石で... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
夏影
○暗転。 じいり、じいり、と蝉が鳴く。緑色濃い竹藪の中、それに合わせ、私はひとりうめいた。じいりじいり。じいりじいり。叫ぶそれらにかき消えて、小さく頼りない私の声は、夏影の下、埋もれゆく。喧噪も度を超せば静寂となる。じいりじいり。じいりじ... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
日曜日
○暗転。 一年のうちで三十日間、神殿に勤める者は自由に休日を得ることができる。週末や祝祭日などは神殿は常に何かの集まりでごった返し、市井の者たちと同様の時間に休むことができないからだ。それはある意味、義務のようでもある。なぜなら、人は休ま... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
紅の夢
○夕焼け空。テキストフェイスは紅丸です。 遙かを眺める。千里の果てを。海の向こうには何があるだろうと。——我のような者だけがある、楽園があるかと。その光景を夢想する。けれど、それはほどなく淡い吐息と一緒に、消える。皿のように目をこらしても、... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
異邦人
○暗転。 ——今まで、大抵のことには冷静に対処してきた。狼狽えるという行為は、私にとって一番忌むべき感情のひとつだ。常に冷静、沈着に。それが私を私たらしめる、言うなればポリシーのようなものだからだ。時折暴れる、自分の奥底に沈む焼け石のように... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
蒼星
○暗転。 生来、手紙というものは好きな方じゃない。インクで手が汚れるのも嫌だし、書き間違いをするんじゃないかという余計なスリルもうざったい。近くの人ならば会いに行けばよいのだし、遠くの人でも旅気分で出かけたっていいじゃないか。何より顔の見... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
水面の星
○暗転。 月明かりの下、恋について語ったことは何度もある。遠くに聞こえる音楽と、空っぽのワインの瓶、白樺の影、白いドレス、仮面。舞踏会を劇場と唄った詩人は素晴らしい。まさしく本質をついている。馬鹿の振りも利口の振りも気分次第。月の下では美... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
にんぎょうのおうじさま
○補足 ボビー主人公ですが、声はつきません……(笑)。○暗転。 まず、無知な君のために自己紹介をしてあげよう。私の気遣いに涙を流して感謝するといい。キシャー。 ○一枚絵 ボビーアップ適当にキリヌキ。 私の名前はボビー。人形の国の王子である。この... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
システムメッセージ – 猫ト指輪ト蒼色絵本
○シナリオ選択○最初にシナリオ選択をする場合 【猫】「やれやれ、それでは話してやるとするか」【猫】「長いのも短いのもあるからな。気長に聞け」【猫】「それでは始めるぞ」 ○二回目以降 【猫】「どれを話して欲しいのだ?」 ○選択できるシナリオがない... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
エピローグ – 猫ト指輪ト蒼色絵本
吾輩は猫である。名前はまだない。——というのは、すでに説明した通りか。そう、名前は実はある。が、その名前はもう呼ばれまいと決めた名前だから、呼ばれないだけ。——頑固者だと笑いたくば、笑え。吾輩はかつて青い髪のあの人に助けられた。大事な人を失... -
猫ト指輪ト蒼色絵本
青い熊さん
○暗転。 青い熊のぬいぐるみを買ってもらった。それはとても大きくて、私の背よりも大きいの。包み紙には入らないから、店員さんが首に大きなリボンを巻いてくれた。それはプレゼントの証し。あの子が私にくれたもの。 ○夕方の広場。 【アクア】「……へへ……...